二千年の港~博多港ものがたり
第37話~第42話



第37話 

背景:A子は何でも一生懸命やるんだけど何だかいつも空回り、その点B子は要領がいいというか、同じ事をやるにしても結果が違う2人のお話です。

テーマ:第37話は、日本は明治になって近代国家の建設にやっきになっている。
博多の港も特別貿易港の指定はされるけれど、遠浅の海が邪魔をして陸揚げ高は今ひとつ。
そんな時代背景の中で1人の博多商人が機転を利かせて大成功を納めます。

タイトル:機転をきかせて一儲け!?

SE:オフィス内雑踏
A:「ねえねえ、聞いてよ!さっき部長にお茶入れてあげたら、『冷たいお茶じゃなくて熱いお茶を持ってきてくれ!まったく君は気が利かないなぁ~』だって、あんまりだと思わない~」
B:「そうね、でも季節的にはもう、熱いお茶の方がいいかもね!」
A:「ちょっと~いったいどっちの見方なのよ~!・・・・・・」
B:「そうじゃなくて、その状況を見て行動しなきゃ折角の行為も結果的には損をすることもあるし、機転を利かせることで得をすることもあるってこと!」
A:「また歴史の話し?!」(うんざり)
B:「そう!、機転を利かせて莫大な報償をもらった村上義太郎って人を見習いなさい!ってことよ!!」
A:「ダレよ?それ!!」
B:「村上義太郎は明治時代の人よ!瀬戸内海を牛耳っていた、あの村上水軍の末裔なの!」
A:「その人がどんな機転を利かせたっていうのよ!?」
B:「昔の博多の港は大型船が接岸できないくらいに遠浅だったから沖に船を停泊して小舟で荷物を陸揚げするという面倒なやり方だったの!!」
A:「で、その村上さんが博多の港を埋め立てたのね!?・・・・」
B:「いくらなんでっも個人の力で埋め立ては出来ないわよ!村上義太郎はあの田原坂の戦いで博多の港の地形を熟知して大金持ちになったのよ!」
A:「どうやって?????」
B:「村上義太郎は博多湾が荒れていても隣の今津湾は波が静かなことを知っていたワケよ!そこで沖合に泊まっている御用船を今津に寄せて苦もなく陸揚げして熊本に急送したの!まあ、地形を熟知していた事を機転の早さがもたらした成功例と言えるわね!」
A:「へ~そうなんだ~!?・・・・」
B:「あっ、部長が呼んでる!ちょっと行ってくるわ」
SE:オフィス内雑踏
A:「部長、何の用だったの?・・・・」
B:「お茶を入れてくれって言われたから、あつ~い緑茶を出してあげたら『君は気が利くね、、今度お寿司でもご馳走しようかな』ってさ!」
A:「何よ!それ、私の情報があったからじゃない!ずるいわよ!」
B:「ね、機転が利いていると莫大な報償が貰えたでしょ!」



第38話 

背景:A子はB子にいつも借りているモノがあります。
高いから買わないのか、面倒だから買わないのか分からないけれど、B子は迷惑してるけど何だか嬉しそう・・・・・

テーマ:第38話は、時は明治時代、今回も博多の風雲児 村上義太郎のアイディア商売のお話です。

タイトル:買っときゃ良かった~。

SE:オフィス内雑踏
A:「ね~ほら、例のヤツ貸して~」(ヒソヒソ声で)
B:「また~!もう、買えばいいじやない!真珠のネックレスくらい!」
A:「だって、高いじゃない・・・・」
B:「チエに貸すのはこれで何十回目と思っているのよ!」
A:「い~じゃない!また例のごとくリクエストに答えたご飯奢るからさ!」
B:「今度は何?結婚式?それともお見合い?」
A:「うん、お見合いの相手に清楚に見られたいから・・・って違うわよ!今度は同窓会よ!」
B:「じゃあ、レンタル料として今度はお寿司奢ってよね!」
SE:鮨屋の『ヘイ!らっしゃい!』もしくはシブガキ隊『寿司くいねぇ』
A:「わかったわよ!も~高くつくなぁ~」
B:「あ~あ、何だか村上義太郎の気分だわ!」
A:「村上義太郎ってこの前話していて明治時代の博多の人のこと?」
B:「そう、彼は田原坂の戦いで大儲けして後、博多で本格的な海運事業を始めたんだけど、
そうとうなアイディアマンだったお陰でたちまち大富豪になったのよ!」
A:「どんなアイディアだしたワケ?」
B:「長崎のグラバー商会からフランス製の大きな灯台を買って、下対馬小路に設置したの!」
A:「自費で付けちゃったの!?太っ腹じゃない!」
B:「購入費と設置にかかった費用は自分で出したんだけど、それ以来、博多湾を利用する船全部に灯台銭という
名称で入港料を取るようになったの!」
A:「ちゃっかりしてるわね!」
B:「その灯台銭があんまりにも高いんで、悶着が絶えなかったらしくて、結局博多の財産区が買い取って一件落着
というワケ!!・・・」
A:「へ~!博多商人健在!って感じね。」
B:「ということで、私もあの真珠のネックレス、チエに安く売ってあげるわよ!!」
A:「いくらで!!?高いんでしょ?」
B:「ううん!1000円でいいわよ!だってあの真珠、イミテーションだもん!」
A:「何ですって!!今まで本物だと思って借りるたびにご飯奢っていたのに~!今まで奢った分返せ~!」
B:「や~だね!ダレも本真珠なんて言ってないもんね~」
A:「ムカー!!」



第39話 

背景:A子は日曜日B子がステキな男性と歩いているのを発見・・問いただすA子は・・・

テーマ:第39話は、明治の博多港が発展していったキッカケとなる木造桟橋のお話です。

タイトル:指定される港と恋する私。

A:「ねえねえ、昨日天神で一緒に歩いていた男の人、いったいダレよ!」(まくしたてて)
B:「あ~従兄弟のツヨシ君のことね、東京から遊びに来てたから、福岡の街を案内していたのよ!」
A:「いとこ~!?ほんとう~?」
B:「ホントよ!気に入ったんなら橋渡ししてあげよっか?」
A:「ホント!?じゃあ、今晩会おうよ」
B:「え!?ま、いっかー、橋渡ししてやって博多港みたいに貿易港に指定されたりするかも知れないしね!」
A:「えっ?!何それ、博多港が貿易港?」
B:「そう、それまで遠浅で大型船の接岸が不可能だった博多の海に長さ360mの木造桟橋が完成したの!」
A:「それで?!」
B:「桟橋のお陰で大型船の接岸が出来るようになって、ますます博多の港の発展性を感じさせたのよ。」
A:「それで博多の港はどんどん発展していったワケね!?」
B:「そう、明治32年には博多築港株式会社が設立されて、那珂川の河口から石堂川の河口までの埋め立て
工事に着手したってワケ!」
A:「埋め立てってどのあたりを?」
B:「築港本町、神屋町、石城町あたり一帯ね!」
A:「へ~・・って、その話とワタシがアナタの従兄弟を紹介してもらうのに何の関係があるのよ!」
B:「だから、博多の港に桟橋ができたことで大型船の接岸が出来るようになって港が発展する。
それは、なかなか男が近寄らないアナタに、ワタシが橋渡しをしてやって、恋はどんどん発展する!ってことよ!」
A:「いや~ホントね!うん、明るい未来が待つ博多港とワタシに乾杯!」
SE:居酒屋の店内音
A:「どお?!いけそう?」(内緒話)
B:「手応えバッチリ!ねえ、アナタそろそろ退散していいわよこれから2人で飲みに行くから」(内緒話)
A:「あきれた!わかったわよ、おじゃま虫は退散しますよ!」
SE:夜の雑踏
SE:バーの店内音 携帯の呼び出し音(PIPIPIPIPI)
B:「ア、チエ~いつもの店にいるわよ、どうしたのよ、もう解散したの?」
A:(受話器を通じて)「え~ん、だって彼女いるんですか?って聞いたら、いないって言うんで私みたいなタイプはどうですか?って言うと「ハハは!ちょっと考えにくいな~」なんて笑って答えるのよ!」
B:「なるほど、橋渡ししてやっても対外貿易港に指定された博多港とは違って、
アナタは恋人指定とはいかなかったわけね! ハハは!」
A:「笑い事じゃないわよ!行くからそこにいなさいよ!もう、やけ食いでピザ5枚は食べてやるから!」
SE:携帯の切れる音(TUー)
B:「マ、マスター!早いトコお勘定してくださ~い」(あわてて)



第40話

背景:いつもの2人は福岡タワーにのぼって、雄大な景色を眺め、シーサイドを満喫。
ふと下を見ると白い砂が印象的なシーサイド百道の海水浴場が見えます。
福岡を代表するシーサイドパーク「ももち」の人気ぶりを話し始めました。

テーマ:第40話は今も昔も市民の憩いの場所であり、最先端の施設があったシーサイドももち。
今の百道と昔の百道、比べてみると以外に共通点が多いことに気付きます。

タイトル:最先端のシーサイド。

A.B:「うわ~っ」
A:「あいかわらず福岡タワーからの眺めは素晴らしいの一語につきるわ~」
B:「ホントネ!ここが全国でも有数の埋め立て地区というのもうなずけるわ~」
A:「えっ?全国有数の埋め立て地って広さの規模が全国的だってこと?」
B:「広さじゃなくて、このシーサイドももちは各施設の造成時にNTTが光ファイバーを張りめぐらせて、学校、博物館、
図書館、 ホテル、病院、3千戸の住宅ができたの!!
A:「フ~ン」
B:「そしてマルチメディアの実験場として、これほど整った環境は日本はもちろん、世界にも無いそうよ!」
A:「へ~、世界最先端のシーサイドってワケだ!」
B:「そう、百道の海岸は昔ッから最先端だったワケよ!」
A:「え~、現代じゃなくて、昔から最先端!?それってどういうこと?」
B:「昔の百道の海岸は、というより海水浴場は最先端の遊戯施設がいっぱいあった全国有数のシーサイドパークだったの!」
A:「昔の百道に?そんなに遊ぶものがたくさんあったの?だとしたらどんなモノがあったのよ!」
B:「そうね、大正7年に夏のレジャー施設として新設されたももちの海水浴場は、今の『シーサイドももち』とは違って、人家もまばらな白砂青松の海岸だったんだけど、その人気ぶりはすごかったらしいわ!」
A:「ヘー」
B:「何でも、300mほどの浜に無料休憩所や脱衣場はもちろん、滑り台やテニスコート、シーソー、鉄棒なんかを揃えてたらしいから、福岡を代表するレジャーパークだったんじゃない?」
A:「レジャーパークは言い過ぎじゃない!?、滑り台にシーソーに鉄棒?私なら、そんな安っぽい施設には行かないな!」
B:「当時は、その程度でも充分楽しかったのよ!何せ、その海水浴場の開場式には1,200人が詰めかけて大いに賑わったらしいから。」
A:「へ~。私なら、この海岸にスプラッシュマウンテンを作って欲しいな~」
B:「何言ってんのよ!そんなの作ったら、ダレひとり泳げないじゃない!」
A:「泳がなくたっていいじゃない!現にこの私だって、海には行くケド、ここ数年は泳いでなんかないわよ!」
B:「チエが海に行って泳がないのは別の理由でしょ!」
A:「な、なによ~、何だっていうのよ~」
B:「チエが海に行って泳がない…ううん、泳げないのは、水着姿に自信が無いからじゃないの~?」
A:「う、うるさ~い」



第41話

背景:いつもの2人の会話のなかでA子が珍しく歴史人物のお話を・・・
でも自分のレジャーと無理矢理結びつけようとするのを見かねたB子は・・・。

テーマ:第41話は明治時代の博多の国際人 福本日南のお話。
国内だけでなくフィリピンやフランスでも有名な彼の若い頃は北海道に着目していました。

タイトル:やっぱウィンタースポーツでしょ。

A:「そろそろ私の活躍する季節がやってくるわね~」
B:「私の季節?それ何のこと?」
A:「ほら、福岡ではまだまだだけど、北海道あたりではそろそろのアレよ!」
B:「あ~っ!スキーのことね!?」
A:「そう、冬の出会いナンバーワン!真っ白なゲレンデで滑走する2人・・・あ~想像しただけでにやけちゃうわ!
はやく北海道に行きた~イ!!」
B:「あなたがスキーねぇ、何だかピンとこないわね~!」
A:「何いってんのよ!!福岡出身の福本日南がいたからこそ日本における今の北海道が存在するのよ!」
B:「あら珍しい!チエから歴史上の人物の話をするなんて!」
A:「へっ、へっ、私も捨てたもんじゃないでしょ!」
B:「でも、ちょっと歴史認識が足らないんじゃないかしら?!確かに福本日南は明治13年に単身で北海道に渡り
調査旅行をしたらしいけど仲間達が政府の資金を乱用したために計画そのものは頓挫したらしいのよ!」
A:「へ~、じゃあ北海道の開拓イコール、福本日南って私の記憶とはどこか違うわね・・」
B:「でもあの当時、北海道に着目したところは、さすが昔から広い視野を持つ博多人ならではって感じね!」
A:「そうよ、やっぱり間接的ではあるけれど今の北海道を作るキッカケは博多人のおかげなのよ!」
B:「それもちょっと違うけど・・・、福本日南って人は全国的にも世界的にも有名な割には地元福岡での知名度は今ひとつなんだよね~」
A:「何でなんだろう?」
B:「まあ、ひとつは作品が有名すぎて作家の名前が出てくることがないってことかな!」
A:「有名すぎる作品って?~」
B:「実はあの『忠臣蔵』は彼がその決定版『元禄快挙録』を出してから大いに売れたのよ!」
A:「へ~!そうなんだ!」
B:「忠臣蔵といったらやっぱり降りしきる雪よね!さっきの北海道の話と何だかつながっちゃうね!」
A:「そうでしょ~!明治の博多人が雪に託した夢を現代の博多人である私が叶える!ん~ロマンだわ~!」
B:「よく言うわよ!旅行に行ったらいつも名産品だの名物だのって、食べてばかりのくせに!」
A:「うるさいわね~!私の目的は新しい彼を見つけにスキーなの!」
B:「ところでチエ、スキー出来るの?聞いたことないんだけど!」
A:「ウィンタースポーツはお手の物よ!まかせといて!」
B:「へ~これまた発見!何か学生のころクラブか何かやってたの?」
A:「うん!小学生の頃ソリ滑り大会 優勝!!」
B:「ハァ~!!」



第42話

背景:いつもの2人は豪華なレストランバーでお食事中。最近暗いニュースが多いからA子を誘って
B子と一緒に「癒し」に行ったつもりが何だか会社は深刻なものに・・・・

テーマ:第42話は世界を揺るがすゲリラや隣国への戦略に警鐘を鳴らす意味でも日本が初めて外国の侵略を
受けた元寇のお話をもとに博多の位置づけと世界平和への役割を主軸にしました。

タイトル:侵略しちゃダメでしょ!!

A:「たまにはこんなお店で優雅に食事するのもいいわね~」
B:「そうね、最近暗いニュースが多いから、自分を癒したくなるのよね」
A:「こうやって食事できる平和っていいわよね!」
B:「でも、世界のどこかでは常に戦争が途絶えた事がないっていうし、私たちも対岸の火事としてみている
だけじゃダメよ!」
A:「え~!この日本にも危機が近づいているって事!?」
B:「で、いうか、今の平和がいつまでも続くようにするには何をすればいいのか、を考えなくちゃダメだって
ことよ!特に博多の人たちは700年前の危機をわすれちゃダメ!」
A:「700年前?博多に何か危機があったっけ?」
B:「何言ってんのよ!元寇のことよ知ってるでしょ・・・!」
A:「あ~、知ってるわ!でも元って国はもう無いんだから心配しなくてもいいんじゃない?」
B:「博多の港は外国からある意味一番近いワケだから、元寇の事を思えば、博多の人達が率先して世界平和を
いかに実現するかを考えなきゃ・・・・!」
A:「そうね・・・・元って国はそんなに世界を震撼させたの?」
B:「当時はユーラシア大陸の三分の二を制覇していたらしいから、世界一の大きさであることは間違えないわね!」
A:「え~!三分の二!?そんなに大きくて強い国の侵略をよくにほんは防げたわね!」
B:「そうね、博多の港の防御システムがいかに優れていたかって事ね!」
A:「それは知ってるわ!防塁ってやつでしょ!」
B:「そう!博多湾をぐるりと囲った元寇の防塁は今の香椎から今津まで続いていたと言うので大変な長さよね!」
A:「現代でもその規模だと大工事よね!」
B:「まあその時は外国からの侵攻は防げたワケだけど、元寇を撃退した戦死たちに恩賞が払えなくて結局鎌倉幕府
は滅亡しちゃったんだけどね!政治って言うのは昔も今も難しいってことね!!」
A:「ん~!!なるほど!!」
B:「博多の人は海を見たら外国との玄関口って事を忘れちゃダメよ!」
A:「は~い!侵略しない、させない、みんなが仲良くできる世の中の作りに私チエは貢献する事を誓います」
B:「よろしい!だ、冷めちゃわよ!早く食べよ!」
A:「いただきま~す!あっ、それ美味しそう~1ついただき!」
B:「こら!!言ったソバから私のお皿を侵略するな~」


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