二千年の港~博多港ものがたり
第31話~第36話



第31話

背景:今回は博多文化のひとつである方言についてのお話。
いつもの2人が何気なく交わす言葉にはいつの間にか共通語だと思っているものもあるはず。
もともと方言コンプレックスのない博多っ子ですが、A子はちょっと気にしている様子です。

テーマ:第31話は、博多弁は韓国から入ってきた言葉が訛って出来たとも歌舞伎のセリフの影響であったりと説は様々ですが、博多っこは東京や東北と違い、大陸に一番近い街ということもあり、人間性も多分に大陸的と言われています。

タイトル:やかましい!でしょ。

SE:オフィス内(会話・電話音)
A:「あの東京本社から来た娘ったら、人の思いやりを馬鹿にして!」
B:「ちょ、ちょっと、いきなり何怒ってんのよ。」
A:「だって~会議用の報告書を両手いっぱいにして持ってるから『やおいかんね~』って言ったら、
ヤオイカンネって何ですか?ちょっと判らないんで~って言って無視するんよ~!・・」
B:「方言なんだからわかんなかっただけよ!別に無視したワケじゃないんじゃない?!」
A:「い~や、方言を馬鹿にしてるのよ!」
B:「博多弁は馬鹿にしたもんじゃないわよ!結構、日本古来の言語に近いとも言われてるし、
大陸から輸入されてきた言葉もあるし、どちらかというと優秀な言葉といえるわね!」
A:「でしょ~!、で、どんなところが優秀なワケ!?」
B:「そうね~、例えば掃除の時に『ほうき』で『はわく』っていうじゃない!?」
A:「うん、うん!」
B:「あれは正式には『掃く』が正解なんだけどハクだったらスカートをはくのハクと区別がつかないじゃない!
掃除の時にほうきで掃く時に使う『はわく』って言葉が別にあるって所が素晴らしいじゃない!」
A:「そういやそうね~・・」
B:「そもそも、博多っ子は方言コンプレックスがないって言われてるの!
やっぱり、昔から大陸文化を享受してきた大らかさがあるのよ!」
A:「でも、あんな風に馬鹿にされたらちょっと気になるじゃない~!?」
B:「何でよ!博多の女の子が使う方言って男性に人気があるのよ!」
A:「へ~」
B:「ほら、相手のことを好きだって気持ちを告白するときも
『好いとっちゃん(好いとう)』って言うと何だか可愛いじゃない!?」
A:「そんな事言うシュチエーションなんてないもん!」
B:「じゃあ、博多弁を使うのやめとく?!」
A:「あんな新人の子に馬鹿にされるくらいならもう、博多弁なんて使わない!!!」
B:「ほんとかな~!?」
A:「ホントよ~!」
B:「とかいいながら、ゼッタイ使うわよ!」
A:「使わない!!」
B:「よし!もしも博多弁使ったら1万円ね! 分かった1万円よ!!」
A:「もう、しゃあしかね~! アッ!」
B:「ハイ1万円!」



第32話

大して忙しくもないA子はいつも会社を休むことばかりを考えているようです。
今日も仕事中だというのにB子を旅行に誘ってる様子。有給休暇も使い果たしたA子はいったいどんな手を使って休む気なのか・・・

テーマ:天下が平定されていよいよ徳川幕府が始まりました。福岡も黒田藩が管轄地となり、
今まで隆盛を誇ってきた博多の町(港)も鎖国の影で一抹の不安が・・・そこで出現した博多豪商第3の男。

タイトル:元気な家族。

SE:オフィス内雑踏
A:「ねえねえ、今度有給取って旅行に行かない?」
B:「チエ有給はもうぜ~んぶ消化したでしょ!」
A:「あっ、そうだっけ?でも大丈夫よ、奥の手があるから!・・」
B:「奥の手って、アナタまさかまた誰かのお葬式なんて言うんじゃないでしょうね!」
A:「あれ?何でわかったの?!」
B:「チエ、この前もそういってズル休みしたじゃない!」
A:「あれはちょっと頭痛が痛くて(?)・・・・」
B:「頭が痛かったのは飲み過ぎの2日酔いでしょ!」
A:「こりゃまたバレてる!!?」
B:「人の名前を語って海外旅行に行くなんて、大賀宗九みたい!もっとも宗九は誉められこそすれ、チエみたいに悪いウソじゃないからいいんだけどね!」
A:「大賀宗九ってダレよ!ウソつきなの?!」
B:「福岡の藩主は黒田長政だったって事は知ってるでしょ?!」
A:「うんうん!」
B:「長政は福岡に移ってまだ日が浅いからまずはお金が欲しかったの、お金を稼ぐには貿易が早道なんだけど、徳川幕府は大名が貿易をして蓄財するのに目を光らせていたから当時の貿易許可証だった渡航朱印状を申請することができなかったの!」
A:「そこで大賀宗九が出てくるのね!?」
B:「そうなの、嶋井宗室や神屋宗湛といった秀吉寄りの商人に変わってメキメキと頭角を顕してきた
宗九が困っている黒田藩を救おうと思って策をめぐらしたのね!」
A:「どんな策よ!?~」
B:「長政の名前で朱印状が申請しにくいんであれば、その息子の名前を使って渡航朱印状を取得すればいいって進言して宗九自身がその取締役になったってワケ!」
A:「そうか~息子か~!!・・・」
B:「宗九自身も巨万の富を築き、黒田藩も堂々と外国と貿易が出来て博多の港も活気を取り戻すし、両者万々歳よ!」
A:「じゃあ、私は息子じゃなくて娘にしょうっと!」
B:「まだ結婚してないでしょ。」
A:「ダメカ!!」



第33話

夏も終わりに近づきつつある日曜日、いつもの2人は街をブラブラ・・・。
毎年のことだがA子にはこの時期になると悔やまれることがあります。
憧れのミニスカート・ ・・今年もはけなかった~

テーマ:徳川幕府がスタートし、いよいよ鎖国が本格的な政策として実行され始めました。
海外貿易で隆盛を誇ってきた博多港の最大のピンチです。起死回生の策で博多の港は活気を維持できるのか、
五ヶ裏回船で危機を救ったお話です。

タイトル:増えていっちゃダメ。

SE:街の雑踏
A:「あ~今年もミニスカート履かずじまいだった~」
B:「なんで?堂々と履けば良かったじゃない!」
A:「その『堂々と』って表現が気に入らないわね~(怒)!・・」
B:「でも、別にミニスカートにこだわんなくてもいいじゃない!」
A:「い~や!私はスッキリした足でミニが履きたいの!」
B:「そんな出来ないことにこだわるんじゃなくて、出来ることを見つけて活路を開かなきゃ!
昔の博多の港みたいにね!」
A:「博多の港とミニスカート、何の関係があるのよ・・・・」
B:「ミニスカートとは関係ないけど、博多の港って、海外貿易で隆盛を誇ってきたじゃない!?」
A:「うんうん!?」
B:「それが徳川幕府になって突然『鎖国』いわゆる海外貿易禁止になったワケよ!
博多の港としては貿易できなけりゃ衰退するのは目に見えてる・・・
そこで海運事業を海外にこだわらずに国内に目を向けたの!」
A:「でも、その時代は大きな船を造っちゃいけない時代でしょ?!」
B:「そうなの!だけど一つだけ例外はあったのよ、五ヶ浦回船がそうなの。」
A:「五ヶ浦回船?」
B:「五ヶ浦回船は能古の島、唐泊、宮浦、今津、浜崎の5つの浦のことを指すんだけど、幕府の米を積むために大きな船を造ることができたのよ!船はどんどん大きくなっていって最大のもので2千石というからかなりの大きさね!」
A:「そうか、海外がダメなら国内に目を向ける、博多の人の機転の良さとバイタリティを感じるわね!」
B:「そうよ!ミニスカートにこだわるんじゃなくて海外貿易禁止同様、『甘いモノ禁止』から始めたら!?」
A:「何よ~それ!?~言われなくても甘いモノは禁止していますよ!」
B:「へ~ちゃんと他の所に目を向けてるじゃない!」
A:「そればかりか、ダンス教室で汗もしっかり流してるもんね!!・・・」
B:「すごい!」
A:「でも、運動するとご飯が美味しくなっちゃって毎日五合炊いても無くなっちゃうのよね!」
B:「5合!!?だから、五ヶ浦回船とみたいにどんどん体が大きくなってるワケね!」(あきれ口調で)
A:「そうなんだー!」(泣)



第34話 

背景:A子はなぜかボーツっとしています。・・・・・憧れの山本君に見とれているのです。

テーマ:第34話は、朝鮮半島と博多の間にある対馬と朝鮮通信使のお話です。

タイトル:こっそりと橋渡し。

A:「いいわね~」(うっとり)
B:「ちょっと、何て顔してるのよ?!はは~ん、また山本君に見とれてたんでしょ!」
A:「ほんっとステキよね~」
B:「一流大学出身で、仕事も出来るし、我が社の王子様って人気だもんね!」
A:「あ~あ、山本君みたいな彼氏が欲しいな~」
B:「よし!私が対馬藩主、宗氏のように2人の橋渡しを買ってでようかな!」
A:「ほんと~!でも、対馬藩主の何とかって何よ?!」
B:「江戸時代の鎖国政策の頃に活躍した対馬藩主の宗一族よ!」
A:「その宗氏は恋い焦がれる2人をくっつけたの?」
B:「違うわよ!!外国との交流を断絶していた江戸幕府が唯一朝鮮とだけは直接交流をしていた時に宗一族が幕府と朝鮮の橋渡し役をやっていたの。」
A:「対馬は朝鮮半島と九州のちょうど中継地点に位置しているしね。」
B:「将軍が代替わりするたびに朝鮮通信使という今で言う外交官を派遣していたらしいから、
当時の日本と朝鮮はかなりいい仲だったみたいよ!」
A:「その2国の熱々カップルを対馬藩主の宗氏が取り持って、そして私と山本君の名かも熱々にするためにヨシコが取り持つ、く~!!イイ話しだ~!!」
B:「いっとくけど上手くいくがどうかは分かんないわよ!。」
A:「いいから、ほら、早く話しをつけてきて!」
B:「え~今すぐ?!」
A:「善は急げって言うじゃない!?朝鮮通信使が来日したいって言ったら対馬藩主もスグ動いたんでしょ!」
B:「そうよ!いずれ日本と朝鮮は仲良くして行かなければという考えがあったからこそ、隠れてでも橋渡し役を続けていたのネ!」
A:「ふ~ん!?って、もう、そんな話しはいいから早く誘ってきてよ!!」
B:「とっくに、誘ってるわよ!!」
A:「きゃーホント!さすが現代の対馬藩主!名キューピット!」
B:「で、待ち合わせ時間は何時にする?私は6時半には終わるけど」
A:「え~ヨシコも来るの~!」
B:「だって、貴方と山本君は食事に行くのは初めてでしょ!!私はもう、5~6回は一緒に行ったから、私が一緒にいた方がいいっていうから・・・・・・・」
A:「5~6回!?ヨシコいつの間に山本君と食事できる中になったのよ~」
B:「ほ、ほら、対馬藩主もこっそりと交流していたし・・・・ハハハハ(乾いた笑い)」
A:「そんなトコまで真似すんな~!」



第35話 

背景:秋の気配が近づいてきた今日この頃、2人の会話もしっとりと落ち着き?
テーマ:第35話は、朝鮮通信使を接待する役割でもあった黒田藩のお話。
アジアの玄関として、博多は外来者をもてなす日本を代表する外務大臣でもあったのです。

タイトル:別れの秋?

A:「秋か~秋と言えば食欲の秋ね~」
B:「あ~あ、秋と聞いたら食欲か、こりゃ、当分彼氏はできそうにないわね!」
A:「うるさいなな~!そえrにしても美味しいものを何でも奢ってくれるステキな彼氏がいないもんかな~」
B:「そんな都合のいい人、今のご時世、接待でもありえないわよ!」
A:「でも、バブルの頃はそういう人いたでしょ・・・・!?」
B:「バブルの頃に限らないわよ!江戸時代にもここ、博多の地で豪勢な接待はあったみたい!」
A:「えっ?アッシー君とかメッシー君とかいたわけ?!」
B:「違うわよ!!ほら、この前、鎖国時代に朝鮮と日本の交流で活躍した朝鮮通信使の話しをしたでしょ。!」
A:「あ~確か将軍が代替わりするたびに来日していた外交官のような人のことでしょ!」
B:「そう、その朝鮮通信使という外交官が来日したときに接待していたのがアジアの玄関口博多の藩主黒田藩だったの!」
A:「黒田藩が通信使を接待する必要があったの?!」
B:「そりゃそうよ!大陸との貴重な交流チャンスじゃない、黒田藩もだいぶん苦労したみたいよ。」
A:「どんな接待だったの?!」
B:「相島という島に『有待邸』という豪華な迎賓館を建ててそりゃ、いたれりつくせりだったみたい!」
A:「え~いいな~、私も黒田藩主みたいな彼氏が欲しいな~!」
A:「で、その使節団を接待するのって、ず~っと続いたの?!」
B:「日本と朝鮮の友好を崩しちゃいけないっていう気落ちから朝鮮も黒田藩もかなり無理しながら続けていたんだけど、とうとう1811年を最後にうち切ってしまったの!」
A:「え~どうして~?!」
B:「朝鮮サイドは渡航に費用がかかり過ぎるし、黒田藩は接待に膨大な費用がかかるし、つまり財政的な理由だと言えるわね!」
A:「ちょっと~使節団も黒田藩も男として情けないわね!それぐらいの交際費が作れないなんて!」
B:「男としてって・・チエは男女の恋愛と同じに考えてない?」
A:「だって、男女の恋愛みたいなもんじゃない?!黒田藩もケチケチしないで、美味しいモノいっぱい食べて貰って気持ちよく帰ってもらうっていうか男としての度量が欲しいわよ!まったく・・・・」
B:「あ~これで分かったわ!!・・」
A:「何がよ!!」
B:「ギクッ!何で知ってンのよ!そんなこと。」
B:「だって秋になったら、美しいモノばっかり奢ってって言い続ける子ブタちゃんはイヤだもん!」
A:「ブタって言うな~!!」



第36話 

背景:ダレもが使ってる携帯メール。ご多分に漏れず2人もやっています。しかしA子の使い方には少々問題が・・・・・・・

テーマ:第36話は情報不足だった鎖国時代に外国で発行された日本地図のお話。
博多の町についても情報不足の影響があるようです。

タイトル:情報不足もいいんじゃない?

SE:メール着信音
A:「きたきた!きゃ~会いたいだって!どうしよっかな~?」
B:「何騒いでンの?。」
A:「見て見て!!ほら新しいメル友、今度会おうか、だって!」
B:「え~っ!やめといた方がいいんじゃない!?」
A:「でも、彼、すごい美形なの!ほら見て、この画像データこの前送れてきたの!」
B:「へ~かっこいいじゃない!」
A:「でしょ!!で今度はこの写真データを送信するの」
B:「ちょっと~チエの写真に見えるけど??どっか違わない??・・・」
A:「へっ、へっ、いいでしょう友達に頼んでちょっと修正したの!!」
B:「ちょっと修正しすぎよ!」
A:「だって、目は大きいほうが好みだっていうから・・・・」
B:「まるで鎖国時代の日本地図みたいネ!」
A:「なによそれ、スゴク綺麗な日本地図だったってこと?」
B:「違うわよ!1658年にオランダのヤン・ハンソンっていう地図制作者も分かんないところは勝手に省略してしまって何だか日本じゃないみたいな地図を発行してしまったのよ!」
A:「いいじゃない!全てを知らないでいる事が幸せだったりするもんなのよ・・・・」
B:「よく言うわよ!何かが欠けていたり、ワンキョクして情報発信することは罪なもんよ!」
A:「その間違った地図で何か問題があったわけ?~」
B:「だって、その地図では北海道は全く存在していないし、何と言っても博多はFACATA
(エフエーシーエーティーエー)って記載されてファカタって呼ばれる事になったのよ!!!」
A:「ファカタか~何だか間が抜けた感じね!」
B:「でしょ~だからチエもそんな修正した写真データを送らないで、自分自身をそのまんま写して送信すればいいじゃない!自信持ちなさいよ!結構、いけてるんだから!!」
A:「え、やっぱ、そうかな~そうねぇ、このままでもイケテルよね~!よし、カメラをこっちに向けて送信ボタンをポチッと押して、よし、これで送信完了っと!」
SE:メール着信音
A:「きたきた~!!なになに~『ステキナメールアリガトウ・・デモ、会うのは止めておきましょう、ステキな彼氏が見つかるといいね、そして今度メールアドレスを変えるから番号がわかったらこちらから連絡します』って、これ、体のいい断りのメールじゃないのよ~!」
B:「あっ、わ、わたし、ちょっと、これから用があるから失礼するわ!しゃネ!!」
A:「ちょっと~!待ちなさいよ~どうしてくれるよの!責任取りなさいよ~逃げるな~!!」


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