新説 桃太郎



24世紀の人類。
そこは、生態系の完全解明により病気も怪我も無く、また、科学技術の発達で食料やエネルギーはもちろん、金でも銀でも簡単に造れる技術もありました。
そんな楽園で人々はみな、幸せに暮らしていました。
ところが、「こんな平凡な世界は退屈だなア」と不穏な事を思うヤカラがいたのです。
彼らは考えました。「この技術を過去の発展途上の世界で使えば、俺たちだけが特別に裕福な暮らしができるのだがなア」と。
事件が起きました。
不穏なヤカラたちは、数々の先進技術を盗み出し、タイムマシーンに乗って10世紀の過去へ脱走してしまったのです。
この時代に、時間を越えて逃亡する犯罪者を取り締まるのは「時空警察官」です。
彼らは、すぐにタイムマシーンで追跡の準備を始めました。
ところが、すぐに追いかけるとどんな罠があるかも知れません。
彼らは作戦を練って行動を起こすことにしました。
まず、生態系の先進技術を使って「警察官」を一歳の赤ん坊に変え、一年で10歳づつ成長するようにして、犯罪者たちが逃げた年月のちょうど二年前にタイムスリップさせたのです。

10世紀の世界。
犯罪者たちが現れる二年前のこと、世の中はそれなりに平和でした。
おじいさんは山に芝刈りに行き、おばあさんは川で洗濯をしていたある日、「時空警察官」の乗ったタイムマシーンがやってきました。
ただ、運悪く地表ではなく川に着地してしまったのです。
仕方なく川の流れにのってタイムマシーンは流れていきました。
川で洗濯していたおばあさんは驚きました。
なんと、上流から大きな桃が流れて来たからです。
いや、正確には桃のような丸い形をしたタイムマシーンだったのですが、すこし目が悪いおばあさんには「おおきな桃」に見えてしまったのです。
急いでおじいさんを呼んで、この「桃」を家まで運んだ二人は、「これは天からの恵みに違いない。ありがたく頂こう」と「桃」を包丁で切ろうとしました。
ところが、その瞬間「桃」は勝手に真ん中から二つに割れていきました。
いや、正確にはタイムマシーンが「着地」したことを自動感知して、扉を開いたのでした。
二人は驚きました。
なんと、割れた「桃」の中から可愛らしい赤ん坊が出てきたからです。
「これこそ子供がいない自分たちに、天が授けてくれたのだ」と二人はとってもよろこびました。
さっそく、この子に名前を付けよう! 
そうです! 「桃から生まれた桃太郎」の誕生です。
「桃太郎」は順調に成長しました。
と、いうよりも生態系の調整により、一年で10歳成長するようになっていたわけです。

あっという間に二年の歳月が流れました。
そうです。24世紀から時間を越えて犯罪者たちが逃げてきたのです。
「時空警察官」の追っ手が来ないのを確認した彼らは、好き放題に暴れ始めました。
実は、二年前に「時空警察官:桃太郎」は先回りしていたのですが、、、、。
20歳の若者に成長した「桃太郎」は、おじいさんとおばあさんに言いました。
「僕が、悪いヤツラを退治して来ましょう!」

犯罪者たちは、村々を襲っていました。
彼らは、村人がもっと恐れるようにと自分の体を恐ろしい姿に変身させていました。
それは村人から見ればまるで鬼のように見えたことでしょう。
「桃太郎」は、出発前に作戦を立てていました。
一人で退治するのは少し危険なので、この時代に応援部隊を呼び寄せるようにしていたのです。
走るのが速く、匂いで犯罪者がいる場所を探し出す警察ロボット。
空を飛んで犯罪者たちの隠れ家の間取りや罠などを探す警察ロボット。
そして、門や塀をすばやくよじ登って入り口を開く警察ロボット。
この、ロボットたちをそれぞれ「犬」「雉」「猿」の姿に似せて、道中のところどころで自然に合流できるように配置していたのです。
警察ロボットは、強力なエネルギーで動きます。
彼らが使う燃料は、ガソリンではなく固形タイプの原子力チップです。
村人たちに怪しまれないように、小さく丸めていたこの燃料を「キビだんご」といいます。

「桃太郎」は、出発しました。
予定通り道中では、♪「お腰にさげたキビだんご、ひとつ私にくださいな」♪と応援ロボットたちが次々に集まってきました。
あとは、日本昔話にあるとおり、犬・雉・猿の応援をえて、「桃太郎」は見事、鬼退治を成功し、いや、時空を越えて逃げてきた犯罪者たちを捕らえて、彼らが村人から奪ったものに加え、未来技術で造った金銀財宝も取り返して無事、村に引き上げてきたのでした。
メデタシ!メダタシ!


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